上海ロックダウンのリアル WEEK #0:
コロナ感染爆発後、上海ロックダウンに至るまで【2022年3月1日〜3月27日】
中国各地でコロナが再度発生し、不穏な雰囲気に包まれ始めた2022年3月。前年末には「市中感染ゼロ」の時期もあった香港では事態が急激に悪化し、ピーク時の3月3日には1日当たりの感染者数5万人超を記録。これは香港の人口の0.77%に迫るほどの数字で、公共交通機関も機能不全に陥る事態となってます。
その頃、大陸側においては青島や吉林省でも感染者が増え始め、3月13日には吉林省で2,000人以上の感染が確認され、省都の長春市では事実上のロックダウンがなされた状態に。
上海においては、1月半ばにオミクロン株による感染が初めて判明しており、ユニクロ旗艦店内に全ての買い物客が48時間閉じ込められるような事態も発生。上海市民を大いにざわつかせました。
その後、一旦は収束したように見えたコロナですが、2月24日に市内で無症状感染者が発見されたのを機に感染が徐々に増加。3月10日には陽性の発祥患者+無症状感染者の合計が75名、3月20日は768名へと急激に数を伸ばし、その影響が日々の生活において目に見えて明らかになっていき、住民誰もがさすがにヤバイ・・・と思うようになったのです。
あらゆる場所に急激に広がっていくコロナと、その悪影響
まだ皆がそれほど危機感を持ち合わせてなかった3月9日 (実際その日、ボクは朝方まで外で飲み歩いてました)、上海同济大学の知人EFから「学校9号起就封校了」と知らされ、大学が封鎖されたことを知ります。復旦大学も同様3月13日から封鎖され、授業は全てオンラインに。
また、校内で全児童対象のPCR検査を行っていた上海日本人学校でも、3月14日より生徒の通学を取りやめ、全てオンライン授業へと移行することが決定。その他にも、塾や幼稚園、託児所等は全て営業停止状態となり、密室空間であるジムも当然閉鎖に追いやられ、大きな公園も次々にクローズしていきました。
ショッピングモール等の商業施設
商業施設でも非常に厳しい対応がなされ始め、陽性者や“密接” (濃厚接触者) がショッピングモール内にいたことが判明した場合、そのモールはすぐに封鎖され、48時間一歩も外に出られない状況に。微信 (Wechat) 上では「さっき (市内ど真ん中にあるショッピングモール) 静安ケリーセンターが封鎖された」「いま、オフィスビル内に閉じ込められている・・・」等のメッセージや写真が度々転送され、異常事態に突入していることをまざまざと感じさせられます。
3月中旬にもなると、週末であっても街を歩く人の数がほとんど見受けられなくなり、市内中心部にオープンしたばかりで話題のスポット「hAo mArket」でさえも、ほとんど人を見かけず。
エンタメ系の娯楽施設
コロナ状況下における「商業施設の営業状況の重要な指標」として考えられている上海ディズニーリゾートも3月21日、ついに閉鎖されてしまい、ディズニーファン以外もヤバイヨヤバイヨ状態を痛感することに。この上海ディズニーリゾートは結局この3か月後、オープン6周年記念を迎えた6月16日にホテルとショップの営業を無事再開していますが (ディズニーランド自体は6月30日に再開)、2021年11月にも園内で陽性者が見つかったことがあり、園内にいた34,000人全員がPCR検査を受け終えるまで帰れない、という悪夢のような事態が発生しています。
一方、おっさん駐在員の夢の国、「KTV (いわゆるキャバクラ)」への影響も避けることはできず、友人のダイオウ氏に「(人気店の) 縁結び2号店も3月10日からクローズらしく、行けませんでした。。」という報告を – なぜか – 受ける。同時期、バーやクラブもやはり速効クローズ (当然、あの極楽湯も) され、ちょうどその頃にクラブ内で遊んでいた全員が封鎖の対象となり、全員防護服を着せられ夜を明かす、という悲劇動画が出回りました。
クラブでアゲアゲ → 待機でゲンナリ → 防護服でグッタリ、の図
出典:【抖音】抖音号 Mmmw…
レストラン等の飲食店
同じ商業施設でも飲食店は比較的制限が緩く、3月中旬でも営業しているレストランはまだまだたくさん。が、大半の店にはほとんど客がいない。。しかし、3月下旬になると多くの店が完全にクローズ、もしくは、開いてても「ワイマイ (デリバリー/持ち帰り) はOKだけども、店内飲食お断り」という状態に。
ちなみに、そんな状況下でもボクがロックダウン直前に奇跡的に外食できたのは3月26日、市内中心の中山公園近くにある複合商業施設「武夷MIX」にて。今や市内に数店舗構えるまでになった人気店「バーバリアン」では、テラス席があるのになぜかそこはNGで、室内席での食事が可。食後には同敷地内のスペインバル「ZeRock」へ。
ここは「(ルール上) 店内飲食お断りだが、客はワイマイでオーダー後、屋外のテラス席で勝手に飲食している」という、いかにもチャイナなグレーなシステム下で営業中。皿もコップも、全て使い捨てのもので提供されます。
普段、週末は数百人レベルで賑わうここ一帯も、この日は50人に満たないほどの静けさで、ロックダウン時に思い返すとその日はまさに「奇跡の日」だったのでした。
市場やスーパー (オンライン/オフライン)
オン/オフラインのスーパーや市場での食料調達は当初それほど影響を受けていなかったものの、3月半ばから徐々に影響が出始めます。3月15日には市内中心の徐家汇ではコンビニからモノが売り切れる状態が発生。
ボクの居住エリア内のオンラインスーパー最大手の盒馬鮮生 (盒马 HEMA) がパンク。初めてAPP上からのオーダーができない状態に。ただ、その際は外国人御用達のスーパー「City Shop」では辛うじてオーダー可能だったため、饿了吗というAPPを通じて注文を行い、事なきを得ますが。
3月22日の夜、“翌日から上海ロックダウン開始” という根も葉もない噂が広がり、多くの人がスーパーに食料調達で押しかけ、一部で混乱が生じます (ちなみに、噂を流した男は翌日に警察に逮捕されたそう)。3月23日には市内中心部の徐家汇ではスーパーの在庫が少なくなり始め、日系スーパーのアピタでもレジ前に長蛇の列が出来上がっていました。
スーパーでの混乱が如実になってきたその日、ボクのマンションでは全てのデリバリーが禁止となり、何もモノを受け取れない状態に。。ただ、その頃でもモノがダイレクトに届く市場ではまだ食料が豊富に供給されていた模様です。
通勤への影響、公共交通機関
多くの人が通勤するオフィスも例外なく多大な影響を受け、3月半ばの時点でオフィス勤務する会社員の大半が在宅勤務扱いに。実際にボクが朝から地下鉄に乗車した3月11日、この時すでに地下鉄の乗客が非常に少なく、感覚的には普段のピーク時の乗客数の1/10程度。
他の交通機関関連の状況としては、まず、3月14日に上海発の長距離バスが全てキャンセルに。また、3月21日以降、上海行きの全ての国際線フライトの到着地変更が行われることになります。上海到着便は、遠くは成都や昆明を含む12都市の空港に振り分けられ、上海への人の流入を最小限に留める施策が次々に遂行されていきます。
【出典: 微博 SMGNEWS】
居住先のマンション
感染者数が目に見えて増え始めた3月頭、陽性者/濃厚接触者が見つかり封鎖中のマンションのリストがWechat上に流れてきます。そのリストには3月6日の時点で100以上のマンションが名を連ねており、その半数以上が市内西部に位置する「閔行区 (闵行区)」。その闵行区の隣に位置する自宅マンションすぐ近くでも3月12日に陽性者が発見され、敷地全体が封鎖されました。
同時期、市内中心部の静安寺近辺も大半のマンションが次々に封鎖されていくのを目の当たりに。静安寺から東へ約4kmの距離に位置する「新天地」近くのエリアも同様で、ここは低層住宅が広がっていることもあり道路の両脇が壁で囲まれ、「通り沿いは全て壁」という異様な光景が展開される。まるで世紀末、まさに異常事態。
Wechatの朋友圈/モーメンツ (Facebookのタイムライン) を見る限り、3月20日の時点では、知り合いのうちの半分ほどがマンション封鎖されているような状況。ちなみに、上海のロックダウン開始前からずっと封鎖されていた住居に住む人たちは、80日間以上も継続して封鎖されていたという悲惨な人たちも。。。
そんな折、3月23日にはボクのマンションでも遂に「出入証」が配布され、部外者の敷地内進入が完全NGに。敷地内にあるサブの出入り口2つは全て施錠され、メインのゲートだけ出入りが可能に。管理がガンガン厳しくなり、生活がどんどん不便になっていきます。
PCRテストと、実際の隔離の様子
ロックダウンが行われる前まで、PCR検査は基本的に病院に行く必要がありましたが、感染者数が増加するにつれて検査場での待ち時間がどんどん増え始めます。日本人学校で通学停止通知が出された3月13日の夜、日本人もよく利用する「同仁病院」では長蛇の列ができており、友人のダイオウ氏も30分以上待たされたとか。
しかし中国人の友人ピャン君によると、まだその頃でも市内中心にある华山医院だと24時間PCRテストが可能で、夜中を過ぎればほぼ並ぶことなく検査が受けられたらしいです。
今回の感染拡大の起点になったと言われる徐汇区においては、早い段階から封鎖対象エリアがどんどん広がっていき、3月中旬には同区域内で毎日PCR検査が強制されるような状態に。ボク自身、自宅マンション敷地内でPCRテストを強制されることはそれまで一度もなかったのですが、その頃ある日突然、居委会 (日本の町内会にあたる組織) の人間が2人家にやって来て、明くる日に敷地内で一斉に検査を行うことを告げられます。
強烈なドンドンドンドンドン!! (玄関のドアを壊さんばかりに強く叩く音) の直後に担当の女性Aが「明日、マンション内でPCR検査するから! これスキャンして!」と。言われるがままに、「健康云」というアプリ上をダウンロードし、登録を済ませます。間違いがないかスマホを見せたところ、「老眼で何も見えやしないわ」と言って女性Aはすぐに立ち去っていく・・・
一緒にやって来た女性Bに同様の質問をしたら上海語で「$W%&#*#&!」という謎の返答。どうやら普通話、いわゆる標準の北京語が話せないらしい。。。結局、どういう手順で検査が行われるのかよくわからぬまま突如のPCR告知は終了。明くる3月18日、敷地内で無事にPCRテストを終え、ひとまず一段落 (と少なくともその時はそう思っていました)。
その後、感染者数増加に歯止めが利かない状況の3月25日、上海市政府から全市民にPCR検査を義務化する通知が流れてきます。その内容は「3月16日以降にPCR検査をしていない人は、3月25日18時に健康码 (健康QRコード) が強制的に黄色に変わる」というもの。「黄色」とはつまり、濃厚接触者と同じ扱いを受ける状態になるため、日常生活に多大な影響を与えてしまうということを意味するため、このアナウンスの影響を受けてPCR検査場に大挙して人が押し寄せる事態に。
友人のササ氏は朝9時半に検査場の列に加わり、結局、3時間以上かけて検査をやっと終了。ここは中国、「ソーシャルディスタンス」をとっている人など (ほとんど) 誰もいないので、感染を助長しているかのような施策であることは言うまでもない 🙁
どこまで本当なのか真剣なのかわりませんが、PCRテストを強制されるのは人間のみならず、犬や猫のみならず魚まで強制されたようで、(実際、真偽は疑わしいですが) そういったバカバカしい様子の画像が広く出回りました。
PCR検査中の犬 【出典: 腾讯网】
魚までもがPCR!?! 【出典: 哔哩哔哩_bilibili】
他にも、「消毒のために、夜中に空からドローンで消毒剤を散布する」といった噂 (ほどなくして正式に偽物認定される) が出回るなど、この異常事態で上海住民の心はかなりナーバスな状態に。
3月26日にはそれまでのPCRテストとは別に、自身で検査を行える「抗原検査キット」が初めて全市民に配られます。以後、ロックダウン期間の前半は定期的に抗原テストをすることになり、日常の一部になっていきます。
陽性患者の隔離ホテル
3月に入ると、市内のホテルが次々に「陽性患者の隔離専用ホテル」に指定されていくニュースやメッセージが流れてきて、実際に近所の五つ星ホテルまでもが隔離ホテルになっていくのを目の当たりにします。
徐汇区のIKEAの目の前にある5つ星「華亭賓館 (华亭宾馆)」も同様に指定されたホテルで、改装工事のため一時休業していたにも関わらず、隔離者の増加により急遽指定を受け、香港からやって来た人たちの隔離ホテルとして使用されることに。ところが、、、
クラスターの起こった华亭宾馆【出典: 星島日報】
しかし、通常の隔離ホテルでは使用することのない「全館空調」を使ってしまったがゆえに、たった数日間で62名もの感染者を出すという大失態を演じてしまいます。(結局、当局者12人が解職/警告処分を受けることが6月11日に発表)
ちなみに、隔離ホテルに滞在する際の費用は政府持ちなので宿泊者自身に請求されることはありませんが、支給される部屋のグレードや食事内容はかなりの当たり外れがあるようで、「各区の隔離ホテルで出された弁当の写真 (真偽/精度は不明)」も広く出回り、長寧区 (长宁区) が緑色の野菜だらけで余りにもヒドい、と評判に。
3月27日、突然の上海ロックダウン発表 混乱する浦東人民と、平静を保つ浦西人民
無症状の新規感染者数が3,450人となり、過去最多を更新した3月27日土曜日の夜20時過ぎ、上海政府より“事実上の”ロックダウンに関する正式発表が突如として行われます。(当初上海市政府は、今回の封鎖は「都市封鎖 / ロックダウン」ではない、という見解でした)
3月28日0時から4月1日午前5時まで上海市内東側の「浦東」を対象に、4月1日午前3時から5日の午前3時までは「浦西」を対象に実施。この東西 (左右) に分けて封鎖する様が、中央に区切りがあって一度に二種類の味を楽しめる鍋、「鴛鴦 (おしどり) 火鍋」の形に似ていることから、SNS上では「沪式鸳鸯封」 (上海式おしどり火鍋ロックダウン)」により「沪国分裂了 (上海国が分裂した)」と大盛り上がり。
“沪式鸳鸯封”ロックダウンのイメージ【出典: 半撇私塾|今日头条】
なお、封鎖対象地域内ではバスやタクシーを含む公共交通機関の運行が停止され、地下鉄の駅も封鎖。許可のない自家用車の使用も禁じられ、市民は基本的に外出禁止に。封鎖期間中は全市民がPCR検査の実施が義務づけられ、感染者を隔離し、新規感染の拡大を阻止するのが狙い。
何の前触れもなく、あと数時間後にロックダウン生活に突入することとなった浦東区民は食料確保のためスーパーへ一気に押し寄せ、建物の外にも長蛇の列が。店内では醜い食物争奪戦が開始されるなど、至るところで半パニック状態に。結果、棚からモノがことごとくなくなっていきます。
【出典: 哔哩哔哩_bilibili】
この発表を受け、上海市外へすぐさま逃げ去る人も多数。が、この状況下の上海へ好んでやって来る変わり者はほとんどいないため、外地から上海行きのフライトはほぼ全て片道100元以下 (2000円)、という大セール状態に。
という感じで、とにかく急に決まったロックダウン。浦東人民には申し訳ないけど、浦西は封鎖までまだ時間に余裕があるため、食材の準備も焦らずユックリ・・・と余裕ぶっこいていたのも束の間、浦西ロックダウン直前に思いも寄らぬトラブルに巻き込まれてしまうのであります。。。 <次回へ続く>
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