三国志 呉の主君「孫権」の子孫が暮らす村『龙门古镇 (龍門古鎮)』訪問記
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三国時代の「呉」の国を治めていた「孫権 [孙权]」の末裔が集まって暮らしている村として有名な、浙江省の「龙门古镇 (龍門古鎮)」を訪問しました。
諸葛八卦村 (诸葛八卦村) に比べるとミステリアスさは少し薄れますが、良い意味で俗っぽくどこかフレンドリーな雰囲気を醸し出していて、村とその周りの自然とのコントラストが非常に美しく、とても思い出深い旅となりました。
龙门古镇 (龍門古鎮) とは?
龙门古镇 (龍門古鎮) は杭州から南西へ約50km、車で約一時間半の距離にある場所で、富春江という美しい川と龙门山 (龍門山) の大自然に囲まれた静かな村なんですが、村と周辺の景色はご覧のとおりまさに壮観です。
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もともと、東漢時代の名士である严子陵 (厳子陵) がこの場所を訪れた際に「(北京と西安の中間にある) 吕梁の龙门 (龍門) に似ている」と話したことから、「龙门镇 (龍門鎮)」と名付けられました。
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ここに村が作られたのは、孫権から数えて27代目となる「孫忠 [孙忠]」が西暦980年に移り住んだのが始まり。現在は7000人以上が暮らしていて、その90%以上が孫姓を名乗り、孫権の末裔がもっとも数多く住む場所となっています。村の入口には「孫権の故郷」と書かれていますが、実際、彼が生まれたのはここから少し離れた富春江上の小島だと言われているそう。
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村の中は古い建物が良い状態で保たれており、その多くが明・清時代のもので300年以上の歴史を誇るとのこと。中国では国家AAAA級景区、中国伝統文化村として認定されており、交通の便があまり良くない場所であるにもかかわらず、結構多くの観光客を見かけました。
龙门古镇へ入場後、孫権の祖父“孫鐘(孙钟)”を祀る「思源堂」へ
この龙门古镇は諸葛八卦村同様、村の中に入るには入場料を払う必要があります。チケット売り場ではスマホで過去14日間の滞在記録を見せてたあと、浙江省の健康吗を提示。チケットを購入後、川にかかる橋を渡れば、龙门古镇の入口です。
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入口を入ってしばらくして左手に見えてくるのが、孫権の祖父である「孫鐘 (孙钟)」が祀られている「思源堂」。ここはその名が表すように「源 (先祖) を思うお堂」なのです。
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建物の中には孫鐘像が描かれたものがあったり、孫家の家系図なども掲げられています。他には「国父孫中山」の文字も垣間見られ、「孫中山」イコール、あの「孫文」も孫権の末裔 (!) であることを今回初めて知りました。
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ちなみに、三国時代よりも前の春秋時代に活躍して「孫子の兵法」を残した「孫武」も同じ家系だということで、こちらも初耳です。こんなにも広大で悠久の歴史を誇る中国においても、なんだか世間は狭いものだなぁ、と感じざるを得ません。
メイン通りで謎の「バドミントン店」、伝統料理「孫権牛八碗」に出くわす
思源堂を通り越しそのまま通りを東へ向かう道、ここが村のメインストリートです。いかにも「観光地!」という雰囲気で出迎えてくれますが、諸葛八卦村と同じようにそこに住む人達がすれてないので、良い感じにテンションがあがります。通りの飾り付けもカラフルなので、村で一番フォトジェニックな場所と言えるでしょう。ここの村を訪れる趣旨とはだいぶずれてしまいますが・・・(汗)
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このストリートを歩いていてまず目に付くのは、バドミントンのラケットを作る&売る店がなぜか多い・・・ということ。時代を考えると孫権とバドミントンの関係性を全く見いだせなかったのですが、どうやら、“この地域はバドミントンのラケット作りが盛んで、ほとんどの住民がこの仕事に従事している” (出典:エキサイトニュース) から、ということなんですね。
せっかくだから、1本買っておけば良かったと少し後悔しています (普段、バドミントンやる機会なんてないけどw)。
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しばらく通りを行くと「孫権家菜館 (孙权家菜馆)」を見かけましたが、村ではこの店に限らず、いろんなレストランで孫権印の名物「孙权牛八碗」が提供されています。孫家で代々受け継がれたこの「牛八碗」は、牛の各部位の肉を用いて作った8種類の料理で、客人の幸せを願って篤くもてなす際に提供された食事のことです。ボクは食事時ではなかったので食することはできませんでしたが、これから行く人は是非とも食事時を狙ってこの村を訪問してみてください。
孫権が殺した関羽を祀る「関帝廟」、村で一番キレイな?「誠徳堂」へ
そのまま道なりに真っ直ぐ道を行くと、何かと写真に収めたくなるような景色がしばらく続き、関羽を祀る「関帝廟 (关帝庙)」に到着。孫権自身が死に追いやった関羽がここに祀られているのは、なぜなんでしょうか!? なんとも皮肉なものです。
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関帝廟の先をそのまま行けば橋に出ます。小さな小河を渡ると左手に「誠徳堂」が。ここは手前のエリアで墨関連の商品が売られていて、さらに内部には美術館、民泊施設があるようです。龙门古镇の中は現代的なクリーンな場所がほとんどないのですが、ここはダントツキレイでした。なので、村に泊まるならここの民泊でしょう。
誰もいないゴーストタウンエリアを抜け、孫権を祀る「孫氏宗祠」へ
来た道を戻って再び橋を渡り、村の南西のエリアを目指します。メインストリートを外れて中へ入れば入るほど、住民も観光客も誰もいない、ゴーストタウン状態となります。実際、古い建物には誰かが住んでいる気配も感じられない場所が少なくなくないのですが、どこか寂れた様子をこうして目の前で見ていると、尊く深い歴史を肌で感じるのでした。
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突如景色が開ける「硯池」を経由し、最終目的地として向かったのが「孫氏宗祠」。ここの中央の宗祠には孫権の大きな画がかけられており、その両脇には周瑜や呂蒙が描かれた画も。
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中庭の右側の一角はご覧のように教室みたいな造りになっていますが、孫家のお偉い先人方はここで何かしら特別な教育を施していたのでしょうか?
まとめ
諸葛八卦村と同じ日に訪問した龙门古镇でしたが、景色や環境が似ているとはいえ、実際に村の中で過ごした際に感じた雰囲気は微妙に異なり、それを肌で直に感じられたのがとても興味深かったですね。
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諸葛八卦村は「完全に閉じられた空間」という印象が強いですが、一方、こちら龙门古镇は村の周りと一部合体しているというか、新旧の環境が一体化している場所もあるので、そのへんの「緩さ」もどこか「愛嬌」のように感じられて良かったです。
中国の著名なエッセイストの何満子 (原名:孙承勋) はこの龙门古镇のことを「来这里读懂中国 (ここに来れば中国を読み解くことができる)」と言ったそうですが、ボクは食事もしてないし、宿泊もしてないし、住民ともほとんど話をしていないので、おそらく5%ぐらいしか理解できていないはず。。
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というわけで、中国のことをもっと知りたいと思ったときには、ここを再訪してドップリつかり、理解を深めていきたいと感じた次第です。次回の訪問は・・・ (考えときます)
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