伝統を重んじ自然を愛するニッポン人だから活かしたい「日本の伝統色」

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日本 伝統色 Japan traditional colors

昨年末から世間を賑わせている新型コロナウィルスの影響で、中国経済への悪影響も心配され始めている状況ではありますが、中国で多くの仕事をさせていただいている身の私ができることとして、“ニッポン人クリエーターだからこそできる”ような情報をできるだけ多く発信していきたいと考えております。

というわけで、今回のテーマは「日本の伝統色」。有り難いことにここ数ヶ月間、 “ニッポン人クリエーターだから” という理由で、中国のお客様から日本人にしかできないお仕事をいくつかいただいております。どのプロジェクトも日本らしさを前面に押し出すために、日本の伝統色をフルに活かしたデザインに仕上げさせていただいている次第です。

そもそも、日本の伝統色とは?

まず、日本における「色」の文化は、6世紀頃に中国大陸から伝わってきた「五行思想」の影響を強く受けていると言われています。古代中国で生まれた五行思想という自然哲学では、この世が「木」「火」「土」「金」「水」の五つの元素によって構成されていると考えられており、それらは各々、「青」「赤」「黄」「白」「黒」の色に置き換えられます。

古来からこの五色が重要な色であると認識され、聖徳太子が定めた冠位十二階の各色も、この五行思想の色を参考にしているのです。

冠位十二階の位と着用色:左から右へ順に、位の高い“徳” → 位の低い“智”まで

例えば、“DICカラーガイド” は日本の伝統色300色を定義していますが、それぞれの伝統色の色名を見てみると、植物や花の名前が多く用いられているのがわかります。例えば、淡い黄色を含んだ薄緑色を表す「裏葉柳」。これは柳の裏葉に着目した色名で、葉の表面の「柳色」よりも更に白みがかった色を表現しています。

これを見るだけでも、日本人がいかに植物や花々に強い嗜好を示しているかがわかり、また、古来より非常に繊細な感性を持ち合わせていたことが感じ取れますね。

使ってはならぬ、日本の“禁色”

平成から令和へと年号が変わって半年以上が経過しましたが、天皇陛下の即位儀式の際、身につけていたのが「黄櫨染 (こうろぜん)」色の装束。この黄櫨染は黄色みがかった茶色で、9世紀初頭の嵯峨朝の時代から天皇陛下以外は身につけてはいけない禁色、”絶対禁色” とされています。
また、皇太子の袍に使用される「黄丹 (おうに)」という、赤みのある黄色も絶対禁色で、皇太子以外は着けてはいけない色とされています。

その他にの日本の禁色としては深紫 (ふかむらさき / こきむらさき)、深緋 (ふかひ)、深蘇芳 (ふかすおう)、赤白橡 (あかしろつるばみ、青白橡 (あおしろつるばみ) などがあり、日本の朝廷において、自分の地位に見合わない者には服装に使用することを禁じられていました。

日本の伝統色と、外国の伝統色

数々の日本の伝統色に関する論文を発表されている、筑紫女学園大学の岡本文子教授の資料には日本の伝統色とフランス/中国の伝統色との比較がなされており (参考1 | 参考2)、非常に興味深い内容となっています。ここでもいくつか紹介させていただきますね。

まず、日本の伝統色をフランスの伝統色と比較すると、両国の風土や気候が全く違うにもかかわらず、色数自体は大きな違いが見られなかった、という共通点が見うけられました。両国間の差異としては、フランスでは青緑系を除き、全ての色相において高彩度の鮮烈な印象を持つ色が好まれている傾向あり。それに対し、日本ではライトグレー~グレーのトーンが好まれてきたことがわかり、そこから日本人が “中庸の曖昧さ” を好み、微妙な色の差異を読み取ることに長けていたことをうかがい知ることができます。繊細さを持ち合わせ、場の空気を読むことが得意な日本人像は、古代から培われてきたものなんですね。実際、江戸時代には町人の間で「四十八茶百鼠」が流行し、灰色や茶色などの地味な色が好まれたそうです。ただ、時代背景として贅沢を禁止する奢侈禁止令が発令されていた背景もあるので、グレー/茶系が実際に好まれたかどうかは一概には言えないんですが。。

ちなみに、フランスの伝統色の名前には「マリー・アントワネット」「マカロン」「ブルゴーニュ」「ブルー・ドゥ・モネ」など、聞き慣れた言葉が用いられており、そこに文化や気質の違いが如実に感じられて興味深いです。

続いて、日本の伝統色と中国の伝統色を比較した結果、まず見受けられた共通性として、赤・黄赤系の色数が圧倒的に多く、黄緑系の色数が最も少ない結果に。逆に、両国伝統色の差異としては、鮮やかで透明感がありクリアな印象を備えた色が日本にはあり、また、青緑系の色が日本には極めて少なかったということです。

一方、DICカラーガイド『中国の伝統色』によると、“数千年という悠久の歴史により培われた中国の色彩は、独特の風格” があり、“中国の色彩は、岩絵の具など鉱物からきた淡く落ち着いたトーンと、鮮やかで深みのある赤のバリエーションや、金・銀が特長” という説明がなされています。実際、中国に行く機会が多い身としては、赤/金/銀が好まれるのはわかりますけども、それが伝統的にずっと好まれてきたのかどうかについては、、どうなんでしょうかねぇ??

色物語:興味深い日本の伝統色をいくつかご紹介

1) 撫子色(なでしこいろ)
撫子の花の色のような、薄く紫がかったピンク色のこと。なでしこジャパンは「大和撫子」から命名されたのでしょうけども、ボクはそもそも「撫子の花」というものがあったことさえ知りませんでした。。「撫子」という言葉は、小さく可愛い花を愛する我が子に見立て、「撫でし子」と言ったことが由来で、撫子の花=女性的な優しさ・華やかさ・可憐さを表現しています。古くは源氏物語の中でも登場する古くからの伝統色ですし、外国人に対しても日本人の女性の美しさや素晴らしさをアピールするにはピッタリの色ですね。

2) 新橋色(しんばしいろ)
現代サラリーマンの聖地として知られる新橋。明治時代の新橋は政治家や実業家が好んで通い、多くのトップ芸者が集まるハイカラな街でした。その当時、欧米から輸入され、化学染料で染められた “明るい緑がかった鮮やかな青緑色” が大流行。その色を新橋の芸者がこぞって和服に取り入れたことから、この色が「新橋色」と呼ばれるようになりました。いま見ても若々しく、洗練されたイメージが感じられる新橋色ですが、新橋の街がいつの日かまたハイカラな街に生まれ変わることはあるのでしょうか・・・!?

3) 憲法色(けんぽういろ)
この黒ずんだ茶色が、日本国憲法? 大日本帝国憲法?、の色?! と思いがちですが、この色に“憲法”自体とは全く関係がなく、、剣術家の吉岡直綱 (号は憲法) が染め始め、広めたとされることから「憲法色」と名付けられた個人名由来の色名なのです。吉岡一門は豊臣軍として大坂の陣に参画しましたが、敗戦後に剣術を諦めて染色家になったという履歴の持ち主。ちなみに剣術の腕前はピカイチで、あの宮本武蔵との試合では武蔵が大出血を負って吉岡直綱 (憲法) が勝利した (or 両者引き分けの両判定) と著されています。ある意味、元々想像していた「憲法」よりも凄いストーリーを持ち合わせた色ですね。。!

日本の伝統色は今、どこで使われている?

1) 東京スカイツリー
現存する電波塔として世界一高い、634mの高さを誇る東京スカイツリー。人工建造物としては、ドバイにあるブルジュ・ハリファに次いで、世界二位なんだそう。そのスカイツリーには、なんと、日本の伝統色が使用されていたのです。スカイツリーの建造物を包む色「スカイツリーホワイト」は、日本の伝統色の「藍白 (あいじろ)」をベースにして独自に命名されたカラーで、藍染め職人の技法にならって白磁に青みを若干くわえたかのような白色。この色の選択はスカイツリーのデザインコンセプトが「日本の伝統美と近未来的デザインの融合」ということが関係しているから。こういった背景を少し知っただけで、スカイツリーを見る目が次から変わってきますよね。なぜだか日本人として誇り高き気分にも 🙂

2) 京浜急行バス
横浜駅東口バスターミナルや羽田空港等に設置されている自動券売機の画面に、日本の伝統色がいくつか使用されています。この券売機は訪日客の増加に伴って開発されたもので、京急バスのコーポレートカラーである青を基本に、日本の伝統色「若草色」「藍墨茶」などが採用されており、京急バス発表によると「海外から来訪されたお客さまへの、最初の日本のおもてなしを色で表現」したということです。こういうトリビア (死語?) を知ってれば、外国人にもモテモテです!?!

日本の伝統色を深く知りたい! 活用したい!!【サイト紹介】

1) 伝統色のいろは https://irocore.com/
日本の色 (伝統色・和色) の名前の由来や読み方、カラーコードを紹介するサイト。RGB、CMYK、Webカラーの各数値に加えて、各色が命名された背景などの説明が事細かになされており、とても興味深い内容です。実用性もバッチリ◎。

2) NIPPON COLORS https://nipponcolors.com/
上記サイトと同様に各色のカラーコードを紹介してくれるサイト。正直、実用性という点では上記「伝統色のいろは」に見劣りしますが、ザ・クールジャパン(!) 的な、洗練されたページデザインは特筆もの。外国人へのアピールにはピッタリ。

3) 素人でもプロ並みの配色ができるデザインパターン参考サイト21選 https://blog.codecamp.jp/color_pattern
日本の伝統色からは少し道が逸れますが、、実際に色んな色をブログや自身のデザインに活用しようと思われている方には非常に参考になるサイトが21 (22?) か所紹介されています。自分で色々試してみてください。

以上、今回は日本の伝統色にまつわるお話をマジメに、いくつかご紹介しました。日本の伝統色はそれぞれの色に意味や物語りがあるので、その背景を十分に理解したうえでデザインに落とし込み、ブランドのこだわりや伝統と上手く結びつけてワンランク上のクリエイションができれば最高ですね。

ボクも頑張ります!

p.s. 「色」という文字の語源は「血のつながりがあること」を表し、それがのちに「男女の交遊」「女性の美しさ」を称える言葉になったそう。なので、「色気」や「色っぽい」という表現があるんですねぇ~

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