(実は) 世界遺産! 大自然に溢れ、少林寺拳法で有名な「嵩山少林寺」へ

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カンフー / 少林寺拳法で有名な「少林寺」、その本場に行ってみたい! と思ったことは、きっと誰でもありますよね?!? ボクは長期休み期間中に、河南省へ行く機会があったので、このチャンスを逃すまい、とはるばる少林寺まで行ってきました!

日本ではあまり知られていないようですが、少林寺 (周辺一帯) は世界遺産に登録されており、中国人には超人気の観光スポットです。達磨大師が修行を行った禅宗の発祥地としても知られており、現地では数多くの外国人観光客も見受けられました。

というわけで、この記事ではお寺もカンフーも大自然もありーの、魅力溢れる「少林寺」訪問時の様子をご紹介いたします!

日本ではカンフーで有名だけど、少林寺とは?

カンフーのイメージが強い少林寺ですが、本山は河南省郑州市登封市にある「嵩山少林寺 Sōng Shān Shàolínsì」です。河南省の省都である郑州 (鄭州) と古都 洛陽の中間あたりの山の中腹に位置しています。

嵩山少林寺は少林武術の中心地で、市内には少林拳を教える数多くの武術学校が開校しており (詳細は後述)、2018年12月2日に放送された人気テレビ番組「世界の果てまでイッテQ!」の企画『万人武術体操挑戦!』のロケ撮影もここで行われました。

「世界の果てまでイッテQ!」のワンシーン。(c)日本テレビ

ちなみに、日本で有名な「少林寺拳法」は、かつて嵩山少林寺で学んだ宗道臣氏が日本で創始したもので、今の少林拳 (嵩山少林武术) とは別物だということです。

嵩山少林寺はただカンフーが有名なだけではなく、496年に創建された歴史あるお寺があり、周辺は山岳信仰の中心地として崇められている聖なるエリアです。それがゆえ、この一帯は2010年に世界遺産に登録されるに至りました。

「天地の中央にある登封の史跡群」の一部として、世界遺産に登録された少林寺

2007年に中国政府から「国家AAAAA级旅游景区 (即5A级景区)」として認定を受けた少林寺ですが、その後、2010年には「登封 “天地之中”历史古迹 (“天地の中央”にある登封の史跡群)」として、ユネスコの世界遺産にめでたく登録されることとなります。

嵩山上峭壁环绕的嵩山禅院 by Iswzo

前述のとおり少林寺周辺は山岳信仰の中心とみなされたエリアで、嵩山は古代から「天地の中央」と呼ばれ “聖なる山” として宗教的・文化的に非常に重要な役割を担ってきました。中国の三大思想「儒教」「仏教」「道教」の古代建築が数多く残されており、嵩山少林寺はじめ、歴史的建造物 (合計8件) を対象とし、世界文化遺産に登録されるに至ったのです。

このエリアは別名「嵩山歴史建築群」とも呼ばれており、ユネスコの文化遺産としてのカテゴリーは、あくまでも「建造物群」。嵩山のマウンテンそのものが「文化的景観」として登録されたわけではない、ということです。

少林寺へは、郑州 (鄭州) からの日帰りツアー参加が簡単!

さて、嵩山少林寺は中国人にも大人気の観光スポットですが、アクセスがあまり宜しくないため、大半の観光客は車を利用するか、日帰りツアーに参加して少林寺を訪れます。ボクはアプリ「携程 Ctrip」を利用して「登封小林寺一日游」という日帰りツアーを予約しました。ツアー代は郑州 (鄭州) からの往復バス代として68.6元 (約1400円) のみ。少林寺への入場料80元 (1600円) は別途自己負担が必要です。

美团を見ると、郑州発の往復バス+入場料込みで130元の激安ツアーもありました【出典:APP美团】

ツアー当日は朝7時頃に鄭州市内中心地の指定された場所で集合です。集合場所には他にもツアー会社が山ほどいるので、間違わないように気をつけましょう。実際のところ、ホントに焦るほど多いので、時間には余裕を見て行かないとまずいです。日本とは違って、少しでも遅刻したらほってかれますからね (たぶん)。

さて、バスは高速道路をひたすら走り、2時間ほどで少林寺のある登封市に到着。町中にある武術学校を横目に (実際はここも見てみたいんだけど、、、ツアーだとまず見られません!)、バスは山の中へと向かいます。その後、10分足らずで少林寺に到着。しかしそこは超巨大な駐車場で車や大型バスでごった返しており、「少林寺は想像を超える一大観光地なんだな」と強く思い知らされました。

駐車場の手前からすでにこの大渋滞

ツアーメンバーは一旦ここで解散となり、あとは終日自由行動。郑州への戻りは16:30。その時間までにバスに戻ってこないといけません。ちなみに、朝到着時の駐車場付近の渋滞は凄まじかったのですが、夕方出発時の混み具合の方が醜かったです。。駐車場を出て市内に至るまでの道のりに時間が非常にかかり、結局、郑州に戻って来たのは出発3時間後の19:30。なかなかのヘトヘト具合でした。。

少林寺に着いたら、やっぱり最初はカンフーSHOW!

さて、少林寺に着いて入り口で入場料を払ったら、中へと入っていきます。しばらく歩くと、まるで天下一武道会が開かれそうな屋外ステージが見えてきて、周辺には数多くの人だかりが。

すると、やがて拳法着をまとった10歳前後の少年たちがステージ上に現れ、カンフーショー始まります。ここではまさに「THE 少林寺!」と言える、アクロバティックな演技が披露され観光客全員が夢中に。到着してすぐに見られて、観光客にとっては「待ってました!」という演目なので、とにかく人だかりがすごいです。ま、しかし、演技内容はそれほど驚嘆するようなものでもなく、、5分ほど見て一通り写真を撮り終えると、ボクはすぐに飽きてしまいましたw

ただ、ステージの袖のあたりでは、出演を待機している演者 (カンフー少年) がいて、彼らのリアルな姿を垣間見ることができるので、そちらを観察している方が断然興味深いです。彼らもやはり至って普通の若者で、とても素朴 (に見える) 。カンフーショーばかりに目を奪われていないで、こういった裏側を散策していると楽しさ倍増でオススメです。

このカンフーショーが行われる時間帯は不明ですが、、どうやら観光客が続々と入場してくる朝10時頃の時間帯には催されている模様。ショー自体は無料なので、誰でも気軽に楽しむことができます。

達磨大師が修行した、ツアーの目玉「嵩山少林寺」へ

天下一武道会 (風) のステージを後にし、しばらく歩くと今回の旅の一番のハイライトである「嵩山少林寺」にたどり着きます。ナンバーワン人気スポットであるがゆえ、とにかく人人人!!! ホリデーシーズンの国慶節休みに来る自分が悪いんですが、予想を絶するほどの人で賑わっています。

この嵩山少林寺は496年に創建された由緒正しきお寺で、禅宗の開祖として有名な「達磨大師」が修行を行ったことで有名です。インドから渡来した達磨大師は9年もの間、壁に向かって座禅を組む修行を行い、悟りを開いたと言われています。これを皆さんご存じのとおり、「面壁九年 (めんぺきくねん)」と言います。(ボクは知りませんでしたよ)

嵩山少林寺は今でも華北地方における曹洞宗の重要な拠点となっていますが、境内に入ると荘厳な雰囲気に包まれ、何か心も洗われるような心地です。寺自体の敷地はそれほど大きくはないので、30分ほどあれば一通り見て回ることができます。

今では観光客に溢れ見るからに潤っている様子の少林寺ですが、1970年頃までは荒廃した状態の寂しいお寺でした。それまでは度々軍隊に襲われ、文化大革命時には貴重な仏像や書物が焼かれたりもしましたが、1999年に少林寺の第30代方丈 (=住職) となった释永信 (釋永信 / 釈永信) 氏によって大胆な商業化が進められ、「少林寺」という一大ブランドを築き上げることに成功。全国人民代表大会に出席するまでになり、鳩山由紀夫元首相とも対面を果たしています。

【出典:China Stringer Network. Reuters】

それだけ影響力があるがゆえ「少林CEO」と呼ばれ、過去には何度も「愛人」「隠し子」「財産横領」などのスキャンダルが浮上しています。言ってみれば宗教団体みたいなものだし、裏でドロドロなことをやってるんでしょうかねぇ。

少林寺と言えば、やっぱりカンフー学校!

少林寺とカンフーは切っても切れない関係にありますが、その文化を支えているのが、登封市内にある数々のカンフー学校。そもそも、この少林寺でカンフーが発達したのは、達磨大師の影響であると言う逸話があるそうで。彼がインドから少林寺にやって来た際、修行僧たちは体力が非常に乏しく、精神を鍛えることもままならない状態であったため、まずは体力を鍛えるために始めたのがカンフー発達のきっかけ (なんだそうですが、これは後世に作られた逸話とも言われています)。

(c) 登封嵩山少林武术学校

さて、少林寺周辺には30を超えるカンフーの武術学校があり、たくさんの生徒が日々稽古にはげんでいます。彼らがさぞかし厳格な生活を送っているのかとお思いきや、過去に少林寺で実際に修行体験を行った Adan Kohnhorst 氏の2018年の記事 を見れば、そんな印象もぶっ飛びます。

(c) 少林塔沟武术学校

彼が一緒にいた修行僧たちは「I’m wearing imitation Shaolin monk robes our producers ordered on Taobao (タオバオで購入した模造品の袈裟を着用している)」と言い放ち、「If you get on Kuaishou and search for Shaolin Temple, you’ll find a lot of us monks, who all livestream when we’re not busy (動画配信アプリの「快手」で「少林寺」と検索すれば、多くの修行僧が暇がある時にライブ配信を行っている)」とか。実際、修行僧のうちの1人は120万人のフォロワーを抱え、彼らからの質問に答えていたそうです。

上記 Adan Kohnhorst 氏のサイト以外にも、大串祥子さんが少林寺の武術学校に3年間通い続けた際の記録がまとめられた、スポーツ雑誌「Number」の こちらの記事 も非常に興味深いので、一度見てみてください。あと、BS朝日の番組「カンフーの聖地へ 世界遺産少林寺 奥田瑛二の鉄道とバスの旅」も少林寺のリアルな様子が見られて面白いです👍

少林寺と言えば、少林サッカー!

少林寺カンフー以外に少林寺と言えば、周星馳 (チャウ・シンチー) が監督・出演し、封切り時に香港映画として歴代最高の興行収入を上げた大人気映画「少林サッカー (少林足球)」でしょう。カンフー仕込みのアクロバティックな技を次々と駆使し、どんどん試合を勝ち抜いていく痛快なアクション映画で、日本の人気漫画・アニメ「キャプテン翼」にインスピレーションを得て制作されています (確かにねw)。

《少林足球》2004 (c) MIRAMAX FILMS

そんな少林サッカーをこの世に実現するべく、2013年に20億元 (当時の300億円ほど) を投じてサッカースクール「少林建业国际足校」を建設する計画があることが発表されました。 

この計画は地域のサッカークラブ「河南建业足球俱乐部」が共同運営を行い、映画そのまんま “少林拳とサッカーを融合” させることを目的としていたようです。いま、その学校がどうなったのか知りたく、百度 (Baidu) や 抖音 (TikTok) で探してみましたけども目ぼしい情報はなに一つ得られず。。夢物語は正夢にはならなかったようですね。

そもそも、なぜ中国の親は、子供を少林寺の武術学校に通わせるのか?

さて、中国の親は可愛い子どもを、人里離れた少林寺の武術学校にわざわざ通わせるのでしょうか? かつてヤンチャだったダウンタウンの浜田雅功が通わされた超スパルタ教育の高校「日生学園」に行かせるような感じなのでしょうか??

中国のQ&Aサイト「百度知道」に 同様の質問が掲載 されていたのですが、それによると “学习武术可以帮助锻炼身体,增强体质,减少生病的几率,帮助孩子健康的成长” うんぬんとあり、つまり、武術で鍛えると身体に良くて (そりゃそうだ)、精神力も鍛えられる (当然、はい)、と。

そして “毕业之后学校会负责安排工作,不用在担心就业问题”、卒業後に学校が仕事探しの面倒も見てあげるから安心 (いまは特に中国若年層の失業率は20%とかで強烈ですしね)、ということです。武術のみならず、通常の学科の勉強ももちろん行うため、文武両道の青少年育成には格好の場所なんですかね。

ま、とにかく、至極まっとうなことしか書かれていませんが、今で言うと、結構厳しい教育で知られる明徳義塾に子供を学ばせるような感じなんでしょう。

ちなみに、この記事を執筆中に見つけた広告 (上記) によると、少林寺にある「嵩山少林文武学校」での入学対象者は4〜18歳。学費は年16,800元〜26,900元 (2万元計算だと、年間約40万円)。写真を見る限り、生徒が坊主頭ではないし、1993年に開校した学校ということもあって、校舎も結構キレイそうですね。

サイトの雰囲気から、少し厳しそうな感じの「嵩山少林武术学校」も条件はほぼ同じで、10-18歳が対象の「全托班」だと学費が年間で18,900元。これには寮、食費、制服、光熱費、レッスン代が全て含まれています。寮は10人部屋でエアコン完備。そして、ここは女性生徒の受け入れも行っています。

とまぁ、1週間ぐらい体験で行くぐらいなら試してみたいですけども、ボク自身がここで青春を過ごしたいとは到底思えませんね。。。カンフースターになる気もないし、、w

達磨大師が9年間、座禅を組んで修行した「達磨洞」

さて、少林寺周辺の観光にトピックを戻しましょう。嵩山少林寺のお寺を出て、奥の方へ進んでいくと、やがて右手に「达摩洞 (達磨洞)こちら」というサインが見えてきます。何の下調べもしてきていないボクは、なんかあるんだろうな、と気軽な気持ちでそちらを目指すことに。

標高数百メートルぐらいの山の頂上がゴールらしく、最初は快調にとばしていたのですが、徐々に傾斜がきつくなり、永遠に続きそうな階段を登らされ、最後はヘトヘトになりながらも、なんとか目的地である達磨洞に到着。

ここは達磨大師が9年間、座禅を組んで修行をしていたという洞で、幅3メートルx深さ6メートルほどの非常に小さな、ひっそりとした場所です。たどり着いた際には「あ、これだけ!?」と感じるほど地味なスポットですが、お寺からも程よい距離があって自然に囲まれているので、修行するにはうってつけの場所なんでしょうね。

修行と言えば、武術学校の生徒がこの山道を走ってトレーニングをしている様子を何度も見かけました。彼らの多くがヤンチャが過ぎた子供時代を過ごしていたのでしょうか!?w 長距離走大嫌いなボクにとって、こんな場所でのジョギング修行なんて考えるだけでも恐怖です。。!

何百もの石墓塔が立ち並ぶ、神秘的な「塔林」

達磨洞からメインの通りに戻ってきて、さらに西側奥に少し進んでいくと映画のように神秘的な「塔林」にたどり着きます。ここには「舎利塔」と呼ばれる石墓が合計280基が建てられていて、中に歴代高僧が眠っています。

古くは唐の時代から始まり、宋、金、元、明、清、そして現代のものまで、各時代の石墓が様々なスタイルで立ち並んでおり、まさに壮観。それがゆえ、数々の映画やドラマのロケ撮影が行われたのだそう。

とにかく写真映えする場所でして、ボクもいっぱい写真を撮らせてもらいました。なんともミステリアス雰囲気は、少林寺のお寺以上に、この旅ナンバーワン映えスポットと言えるほどです。

高所恐怖症の人は、けっして行ってはならぬ!?「三皇寨」

少林寺の見どころと言えば、お寺とカンフーぐらいでしょ? と日本人の大半の人はそう思うかもしれませんが、他にも観光スポットがまだまだ盛りだくさんで、特に「三皇寨」は超人気のスポット。

ここは海抜1500mの場所に位置し、総面積35k㎡を誇る自然公園です。まさに「断崖絶壁」の風景がずっと続き、のんきに美しい!とは言ってられないほど、しゃれにならないほど怖い場所です。ボクみたいな高所恐怖症の人は、全然楽しめません。実際、途中まで友人に着いて行きましたが、徐々にハイキングを楽しむ余裕などなくなり、血胸は途中で引き返してきました (汗)

なので、奥に何があるのか、どんだけ長い距離を歩く必要があるのか、ボク自身は何も知りませんw けども、ここのハイキングをみっちり楽しみたい人は、半日は必要だと思いますので、十分な時間と体力を残して挑んでください。

まとめ

というわけで、少林寺をそれなりに満喫したわけですが、カンフーをそれほど強く感じられなかったのが唯一の心残りです。修行を行うカンフー少年を間近でマジマジと見たい人は、登封市内に宿をとって、自分の足で市内近くにある学校を訪れるしかないようです。

ま、そもそも、中国人にとってはお寺訪問と周りの観光スポット探訪がメインのようなので、あまりカンフーには期待しない方が良いでしょうね。逆に、自然が大好きな人は「聖なる山」を十二分に満喫できるでしょうし、オススメです。

それだけに、少林寺に行く際は、天気が悪い日を絶対避けるべきです! また、少林寺の周辺には食事をするところがほとんどないので、水やスナック的なものを持参するのを強く推奨いたします。少林寺はそれなりに面白かったけど、次来るとすれば、息子を修行させる時ぐらいかな。。w

あと、時間に余裕がある人は、同じ河南省の南に位置する南陽武侯祠もオススメですので、是非ともプランの一部に組み込んでみてください!

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