これはUFO!? まるで要塞のような集合住宅、世界遺産の「福建土楼」
旅をするなら、世界遺産に認定された宿に泊まってみたい!!! と思いますよね? 福建省の山奥に位置し、客家 (ハッカ) の集合住宅として知られる「福建土楼」。2008年に世界遺産に登録されたこの福建土楼、一部が宿泊施設として開放されており、住民と同じ環境下で時を過ごすことが可能なんです!
上空から見るとUFOか!? と見間違えるほど巨大な円形の建造物で (※楕円形、方形もあり)、実際に現地に足を運ぶとまさに「要塞」という感じ。実際、過去に軍の横暴に抵抗した反乱農民が土楼に立てこもった際、土楼の壁に大砲が19発も撃ち込まれましたが、ビクともしなかったそうです (!)
そんな、唯一無二の魅力を誇る「福建土楼」を訪問した際の様子をこちらでご紹介いたします。
そもそも、福建土楼とは?
12〜20世紀にかけて、盗賊など外部からの襲撃を防ぐことを目的に建てられ、中国の中原から南方へ移民してきた客家 (ハッカ) が居住する集合住宅。通常、風水によって決められた、畑に囲まれた場所に立地しており、1つの土楼には通常、血縁の一族が一緒に暮らしています。
土楼は数十戸ほどのサイズのものが多いですが、大規模なものでは数百人もの人が住んでおり、集合住宅というよりも、その中だけで生活が成り立つので小さな「街」といえるような場所です。多くが福建省の南西部の山岳地域に建造されており、世界遺産「コロンス島」のある厦門 から車で2〜3時間の距離に位置しています。
2008年、46棟の福建土楼がユネスコ世界遺産に登録
福建省には20,000を超える土楼が存在すると言われており、その中で「福建土楼」として登録されているのは3,000棟。2008年には、その中の46棟がユネスコの世界遺産に登録されました。
選定理由として「生活と防衛を集団で行う組織の、特徴的な伝統的建築と機能の例として、またその環境と調和したあり方に関して」優れた点が認められた結果です。実際に現地に足を運んで土楼に滞在してみると、そのスケールの大きさと現実離れしたスタイルに圧倒され、「まるで漫画の世界かよ?」と感じるほど。
福建土楼の「建築物」としての構成
土楼は外部からの攻撃を護るため、180cm以上の分厚い土壁と木製の建材から成り、大半が3階〜5階建て。土楼自体の建設位置が風水で決められたのと同様、内部の部屋の数や配置も風水に基づいて決められています。
土楼は中国伝統の「外に閉じ内に開く」という居住概念に従って設計され、土楼内の中央部に中庭を設置し、それを取り囲むようにして壁の部分に各部屋が展開されています。1階はキッチン&コミュニケーション空間が広がり、2階に食料等の保管場所が確保され、3階より上階に居住空間がある、というのが一般的な構造です。
なお、土楼内のすべての部屋は同じサイズで、窓やドア、使われる材料も同じもので統一されており、世界でも稀な「対等な共同生活を送るモデル住居」なんだそう。あの閉じられた空間・世界の中で少ない同居人たちとうまくやっていくために、結果的にこういう形になったのでしょうね。
福建土楼を満喫するために、まずは土楼内に泊まれる宿へ!
今回、ボクは主な土楼を何箇所か巡りたいと考えていて、それらを効率的に見て回るための拠点として選んだ宿泊施設が「余庆楼客栈 Yu Qing Lou Hostel」。ここは土楼内の部屋が宿泊施設として開放されており、住民と同じ目線で一日を過ごすことができるのです。
この余庆楼客栈は「永定」というエリアの「初溪土楼群」に位置し、1729年に建造された300年の歴史を誇る土楼。直径が42メートルなので、小ぶりサイズです。部屋は非常にクリーンで部屋内にトイレもシャワーもあり、冷暖房も完備。
WiFiもあるので仕事大好き人間のボクみたいな人 (- -;) でも大丈夫w 実際、部屋は少し狭いし、大型ホテルのような快適さはありませんが、この古い土楼でここまで快適なら十分すぎるぐらい。ま、この宿に限りませんが、土楼特有の「カビ臭さ」があるので、それが気になる潔癖症気味の人は宿泊を避けるほうが良いかも。
福建土楼の中でも屈指の人気を誇る、振成楼、福裕楼、田螺坑へ!
福建土楼訪問の旅、二泊三日でボクが向かったのは、中でも人気があると言われている「振成楼」「福裕楼」「田螺坑」の3か所。厦門の高崎空港からチャーターした車で約3時間、200kmの道のりです。
空港を出てからは、山の合間をぬっていく高速道路をただひたすら走り続けます。非常に退屈です (涙) こんなに長い距離をかけて襲撃しに来ても、難攻不落の土楼を攻略することは至難の業だったでしょうし、昔の盗賊には割の合わない場所です。。w
振成楼 Zhèn Chéng Lóu
数ある福建土楼の中でもメインのひとつは、別名「土楼王子」と呼ばれている「振成楼」。ここはタバコでひと財産築いた子孫 (後述する林仁山の息子) によって1912年に建造された、かなり新しい部類に土楼です。非常にクリーンで、確かに観光客向けという感じは否めないぃ (のが少し残念)。
ご覧の通り質実剛健な佇まいで4階建ての土楼の建物の中にはなんと、合計184もの部屋があります。数百人が居住する狭い空間なので、いかに隣人とうまくやっていくかが死活問題です。上述したとおり、土楼内の住民同士が「対等の関係」にあったのはなるほど納得です。
この振成楼は外壁に面しているメインの建造物とは別に、内側の中庭にも2階建て32部屋の建物が建造されています。中央に祖廟がありますが、見ての通り西洋の影響を受けたスタイルとなっていて、非常に興味深いですね。
田螺坑 Tián Luó Kēng
ボクが続いてやってきたのは、振成楼から30kmで車で一時間弱の距離にある「田螺坑」。ここには4つの丸形土楼と、1つの方形があり、合計5つの土楼から成る「土楼群」です。
中でも最も古い、中央に位置する方形の「歩雲楼」は1796年に建造され、振成楼よりも歴史ある土楼なので「良い味わいだなぁ」と思っていたのですが、実は今の建造物は1936年の盗賊による火災で全焼した後に1953年に再建されたものだと聞き、ズッコケましたよ。。w
その他の丸い土楼はそれぞれ「和昌楼」「振昌楼」「瑞雲楼」「文昌楼」と呼ばれ、それぞれ30部屋前後の規模。1930-1966年に建造された、非常に新しい土楼です。(けども、こんなに新しいものが世界遺産として登録されて良いんですかね、、!)
ここの土楼の見どころは何と言っても、5つの土楼が身を寄せ合って集まっている “可愛らしい” その様と、周りの大自然との一体感でしょう。近くにはキレイな川が流れていて大自然がいっぱいで、土楼の周りには何もない環境なので、まるで時がストップしたかのような感覚に陥ります。
福裕楼 Fú Yù Lóu
その後にボクが訪れたのは「福裕楼」。ここは「土楼」というよりも、「お屋敷」か「蔵」のように見える、ごくごく “普通” の建物です。観光客にとって、インパクトがはっきり言って弱いんですけども、この福裕楼は1882年に建造された歴史ある土楼で、永定県で最大の「府第式土楼」という様式の土楼。
正面の建物は2階建て、左右両側の建物は3階建て、向かって一番奥にある建物が4階建て、という構成になっており、「四合院」にルーツを持つと言われている様式が、この「府第式」です。
ま、とにかく、見かけは普通に見えども、土楼の中で最も古くからある形式である「府第式」の福裕楼は歴史的価値が非常に高い、ということなので、それ有り難く感じ、黙って見て回りましょう!
さて、この福裕楼、他の土楼とは違って入り口が3つに別れていますよね? なぜかと言うと、この土楼を建造したのは事業で財を成した林徳山、林仲山、林仁山の三兄弟で、彼らがこの土楼を三分割したしたため、門が別々に構えられているということです。
兄弟同士ではほとんど口も聞かない、という男性が日本には結構多いみたいですが、ボクにも男兄弟がいれば林三兄弟のように一緒に成り上がりたかったです! いや、妹のがいいかな。
まとめ
実際に福建土楼を訪れてみると、どこを切り撮っても絵になる光景が広がっているので、撮影好きの人には絶好のスポットです。ただ、アクセスが不便なのと、土楼の中は風通しが悪いこともあって (宿の室内のみならず) 土楼内のどこにいてもカビ臭いがするので、そこに住むのは難しいよなぁ、、というのが正直なところ。
ま、とにかく見かけが独特で、歴史が感じられて、見る価値&訪れる価値ありありのスポットなので、興味がある方は時間を見つけて是非訪問してみてください!
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