1930年代の教会をリノベーションした書店、思南书局 诗歌店 【上海】

思南书局 诗歌店

ニッポン全国で街中の本屋が日に日に減る一方ですけども、上海では書店がいま、対照的に増加しているんです。確かに、数年前までは街中の本屋の数は諸外国と比べて明らかに少なく、中でも「使える」場所はごくごく限られていました。ところが、そんな使える書店の中でも、カルチャー発信基地としての「オシャレ書店」がここ数年でかなり増えておりまして、わざわざ行ってみたくなるような店もわんさか。

というわけで今回は、上海の旧フランス租界地内にあって、歴史ある教会をリノベーションした、とっっても美しい本屋さん「思南书局 诗歌店」をご紹介します。

思南书局 诗歌店 とは

今回ご紹介する「思南书局 诗歌店 (思南書局 詩歌店)」は詩集や散文をメインに扱う書店で、場所は淮海路のH&Mや复兴公园の近くに位置する皋兰路 (住所:上海市黄浦区皋兰路16号 [16 Gao Lan road])。このストリートはフランス租界時代には “Rue Corneille” (高乃依路) と呼ばれ、その名前は著名なフランスの詩人 Pierre Corneille が由来なのだとか。そんな場所に詩専門の書店をオープンするなんて、何とも憎い演出です。

上海 思南书局 诗歌店 sinan bookshop Shanghai

皋兰路は、かの張作霖の息子である張学良の旧居があるぐらいのポッシュな場所でして、昔は閑静な高級住宅街であったであろうことが容易に想像できる、非常に落ち着いた雰囲気の、大人のためのストリート (良い意味で・・・!) という印象です。

そんな皋兰路にある、1932年に建てられたロシア正教会の建物「St. Nicholas Church (圣尼古拉斯教堂)」を改装し、書店として生まれ変わったのが思南书局 诗歌店。過去にオフィスや工場として使われていたこともある古い教会ですが、書店の前はスペイン料理屋「BOCA」として利用され、この度、リノベーションを終えて2019年12月に書店としてオープンしました。 

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1940年当時の写真 (左) と、2020年の写真 (右)

コンセプトは “Church in church”

教会の外観は昔からほとんど変わっていない様子ですが、いったん中に入るとその内装は1989年にデビューしたルーブル美術館の「ルーヴル・ピラミッド」のごとく、新旧を上手く融合したデザインが秀逸で、店内にいると本なんてそっちのけで、思わず長時間見とれてしまうほどの美しさです。

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そんな美しい思南书局诗歌店のデザインは上海の建築設計事務所 Wutopia Lab が手がけており、「Church in church」というコンセプトのもと、総量45トンもの鉄プレートを利用し、“古い石の教会”の中に“新しい鉄の教会”が造り上げられています。格子状に繋げられた鉄のプレートが特別な間仕切り+カーテンのような役割を果たし、外光がそのまま真っ直ぐ中に入り込むのではなく、独特の陰影・反射をつくり出して外光が中に入り込み、その様はとても神々しくロマンチックで、展示されている書籍作品へのリスペクトが表現されているかのようです。

Wutopia Lab が手がけたリノベーションの過程に興味がある方は、こちらの記事 (英語/中国語) で詳しく確認することができます。超絶に美しく写された写真もたくさんあるので、ホントにオススメです。 

「詩」色に染まった書店内部

店内には詩集をメインに、散文や絵本などを含め、合計1000点ほどの書籍がキレイに展示されています。世界各国の著名人の作品は国ごとに分けられており、日本人の作品も多数あり。

我らが松尾芭蕉の句「古池や 蛙飛びこむ 水の音」が店内のモニュメントに日本語のまま掲出されており、そのすぐ横にはゲーテ『ファウスト』内の一節「Grau, teurer Freund, ist alle Theorie und grün des Lebens goldner Baum」が。こちらもそのままドイツ語です。ちなみにその意味は「一切の理論は灰色で、緑に萌えるのは、生命の黄金の樹である」。

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左から卞之琳、ゲーテ、松尾芭蕉の詩が掲げられた店内モニュメント

そして、さらにその横には、現代中国の著名な詩人で“新月派”の代表詩人であった、卞之琳 (Bian Zhilin) の詩が。「你站在桥上看风景,看风景人在楼上看你。明月装饰了你的窗子,你装饰了别人的梦。」と詠われたこの詩は彼の代表作で、不朽の名作と言われている『断章』の中の一節。直訳すると「君は橋の上で風景を眺め、風景を眺める人は階上から君を見ている。名月が君の窓を飾り付け、君は他人の夢を飾り付ける」といった意味。

この詩で卞之琳は「宇宙と人生に対しての探求」を行い、それまでの「伝統的概念」と「西欧象徴主義的な芸術手法」を融合させ、オリジナルの現代詩スタイルを形作りました、とさ。(参照:百度百科)

ボクにとって非常に難解な中国語の詩とはいえど、空間的にも時間的にも立体的な世界の中に構築された、ロマンチックでどこか切なさも感じられる描写に、どこか惹かれるものを感じますね。

単なる「本屋」というよりも、もはや「美術館」

この書店は入口を入ると、目の前の中央部にカウンターがあり、ここから真上を見上げると、何十年も前に描かれたであろう天井画や壁画を垣間見ることができ、ここが以前、ホンモノの教会だったんだということを再認識させてくれます。

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カウンターの周りを囲うようにして、鉄のプレート書棚に世界各国の詩集を中心とした書籍が並べられており、カウンターの右側の部屋には絵本が、左側のエリアにはアートグッズが販売されています。

ここのアートグッズ売り場、取り扱うアイテム数は決して多くはないのですが、気の利いた商品が色々と揃っていて、ちょっとシャレや気の利いたプレゼントとして喜ばれそう。中でも、ロシア正教会の教会の形をした小物入れは個人的なお気に入り。

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このアートグッズ売り場の奥を右の方へ入れば、そこはカフェ。店内は大聖堂のような荘厳な雰囲気が感じられる、ムード満点の暗めのライティングになっていて、ゆったりと落ち着いた時間を過ごせるでしょう。外にはバルコニー席もあって、目の前の通りは緑が多く非常に静かなので、天気が良い日はまさに最高の環境ですね。

とまぁ、書店ながら書籍以外にも見所が満載で、こうして記事を書いている間にも、もう一度行きたくなってきました。歴史ある場の雰囲気もさながら、展示されている詩集や絵本などはアート作品ですし、ここは本屋というよりも、もはや美術館!

入場時の注意事項

混雑回避のため、2020年4月現在でも入場時には事前登録が必要です。微信 Wechat で公众号「世纪朵云」を検索し、フォロー。その中で「思南书局」→「思南动态」を選択すれば、予約画面にたどり着けます。

予約を行うと、アプリ「走起」内でも予約内容の確認が可能になり、入口で予約時のQRコードを見せ、その場で店の微信アカウントをフォローすると、晴れて入場可能。ボクが行った時は、入場時にチョコのマシュマロをいただきました 🙂
いまのところ、平日ならその場で予約しても入ることができるようですが、混雑が予想される週末は予め予約した方が良いでしょうね。

建物の内部があまりにも美しいので、カメラを持参しなかったのを悔やみましたが、店内はカメラを使用しての撮影はNGということでした。なお、スマホでの撮影は問題ありません。

書店訪問後のひととき

思南书局 诗歌店をひととおり満喫した後は、その周辺をゆっくり散策するのもオススメです。書店裏側にある古い老房子の二階には猫カフェの 乐阁猫咪咖啡 Le Chaton Coffee House があって、ノンビリと休憩するにはピッタリ。

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冒頭で紹介した、1934年に張学良が住んでいたと言われる旧居は皋兰路1号に。中はスペイン庭園のある美しい洋館で、こちらも非常に興味深い歴史的建造物。中の様子は こちらのページ でいくつか見られます。

とにもかくにも、あたり一体は非常に静かで落ち着いた雰囲気で、上海のメインストリートの喧噪から逃れるにはうってつけ。ノンビリした後は、散歩がてらに淮海路の方に出れば niko and…や無印良品MUJIの上海旗艦店もあるので、一通り遊べて楽しい一日になること間違いなし!です。

思南书局诗歌店 まとめ

“Church in church” という独創的なコンセプトのもと、伝統的な教会を美しく蘇らせた思南书局 诗歌店。詩集好きにはたまらない、最高の環境下に作品が展示されていますが、詩や散文に興味がない人にも非常に魅力的で美しい煌びやかな場所なので、是非とも一度実際に訪問してみてください。

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ボクはこの書店の写真をアプリ小红书の中で目にした時、大きな衝撃を受けて是非とも訪れてみたい!と思い、すぐに行ってみたのですが、実物を見た瞬間は正直、少し期待外れでした。。というのも、実際の倍ぐらいの規模の建物だと勝手に想像していたからで、でも、その場にしばらくいると、凄く丁寧に作り込まれた空間であることを感じることができ、その印象も徐々に変わっていきました。

また、こうして記事化する際にいろいろ調べてみると、興味深い事実がたくさん出てきて、訪問前よりも更に興味が湧いてきてるという状況です。ですので、近いうちにまた再訪したいと思います!

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