ウイルスに負けない体づくり② 事前に知っておきたい筋トレ知識
「筋肉は裏切らない」とはよく言ったもので、一度始めたら良いことずくめの「筋トレ」。そのメリットは前回の記事『ウイルスに負けない体づくり① 自宅筋トレのメリットと、その準備』でご紹介したとおりですが、今回は、実際に筋トレを行うに際して、事前に知っておくべき「重要な筋トレ知識」についてをご紹介。効果的・効率的な筋トレを行うために、是非覚えておきたいポイントの数々を追っていきます。
同じ部位を毎日鍛え続けるのはNG!休息は十分にとる!
痩せたい! 筋肉を増やしたい!からと言って、むやみやたらに毎日同じ部位を鍛え続けるのは絶対にNGデス!! 筋トレで筋肉を痛めつけた後の「回復」する過程で筋肉は成長 (=筋肉肥大化) しますが、回復しきらない状態で筋トレを行うと、ただただ筋肉が破壊されるだけで、筋トレの効果は出ません。
ですので、筋肉には十分な休息が絶対に必要。ちまたで有名な「超回復理論*」によると、筋肉休息用の理想の時間は48~72時間と言われています。
しかし、この「超回復理論」には異論を唱える人も。それは「筋肉博士」と呼ばれ、ダルビッシュ有のトレーナーを務めた山本義徳氏。彼は、筋肉の肥大化は「超回復」ではなく、「ストレス応答」によるものだと主張しています。彼は超回復のメカニズムを疑問視してはいますが、「筋トレ後に休息が必要」という点に関しては同意見で、彼の膨大な経験と知識から、“筋肉は休んでいるときに発達しますから、休まないとまったく意味がない”。また、筋トレ後の休息に “中2~3日くらいあけておけば十分” と具体的に発言しておられます。(参照:山本義徳インタビュー [PHYSIQUE ONLINE]|山本義徳オフィシャルブログ)
この休息期間をどのぐらい長く設定するのかは、個人によって幅があるようなので、自分で見つけ出してください。ボク自身は、極力、毎日何かしらの運動を行いたいので、だいたい月水金は上半身を鍛え、火木に自転車トレ、週末はジョギングを行うというスケジュールを組んで、どの部位もトレーニング後48時間は休息を与えるようにしています。実際にここの記事でも、上半身と下半身を鍛える日を別にして、交互にくるよう設定しています。
*超回復理論:トレーニング後にその疲労から回復した際、トレーニング前よりも身体 (筋力+体力のレベル) がより高い位置にまで回復する、という理論
筋トレ中は呼吸を止めず、呼吸を意識した方が良い—らしい
昔から半ば常識として「筋トレ中に息を止めてはいけない」と言われていますが、一般的な筋トレの場合ですと、基本的には「力を入れる時 (筋肉が収縮している時) に息を吐き、力を抜く時 (筋肉が伸張する時) に息を吸う」のがベストとされています。
呼吸法には専門家の間でも様々な考え方が見受けられますが、一般的な「呼吸肯定派」は、息を止めずに呼吸をすることによって、①酸素が筋肉に行き渡りやすくなり、②筋肉をリラックスさせる効果があるため、上記のような呼吸方法を推奨しています。それとは逆に、人によっては「筋肉の肥大化に呼吸方法はほぼ影響がない」と言う方もいるので、ボクは呼吸に関しては細かいことは意識しすぎることなく、自然にフィットにするやり方で行えば良いと思ってます。
筋トレ上級者の場合、一番きつい場面で一瞬だけ息を止める「バルサルバ法」というものもあったりしますが、ただ一点確かなこととしては、息を止めた状態でハードなトレーニングを行うと、血圧がもの凄く上昇して危険です。そこだけは気をつけてくださいね。
筋肉肥大化のためには「高負荷・低回数」トレーニングが効率的
筋肉をつけるために、「低負荷・高回数」と「高負荷・低回数」のトレーニングを比べた場合、総負荷量 (負荷重量x回数xセット数) が同じなら筋肉肥大化の効果は同じであるという論がある一方で、東京大学の教授も務めていたトレーニング科学の専門家で、ボディビルダーとしても活躍中の石井直方氏の記事によると、筋肉を肥大化させるためには、自分が行える最大負荷の80%程度の負荷で8回動作を繰り返し、それを3セット行うとベストということです。
一方、先ほどの山本義徳氏は「101の理論」を提唱しており、“身体の能力を100としますと、それに対するトレーニングの刺激は101でよく、120、130の刺激を与える必要はない。101以上の刺激は無駄で回復を遅らせるだけ” と述べられています。この「101」が難しいところですが、彼は “ほんの少し筋肉痛がくれば、それでもう十分。次の日に筋肉痛がでるのは120、130” =オーバーワークであるとここの記事でコメントしています。
いずれが正しいかはさておき、両者の理論から考えると、負荷が高すぎるトレーニング、いわゆる「オーバーワーク」は全く意味がないので、そこは十分に気をつけながらトレーニングを行うべきですね。
結局、どういう負荷は良いのか?という話になると、詳細は後述しますが「トレーニング時間が長くなるとトレーニング効果が薄れる」ため、それを避けるためにも「高負荷・低回数」がベターだというのがボクの結論です。
鍛える順番も重要! 体力的に負担がかかる部位から順に、が鉄則
筋トレをする時には、体力的に一番負担がかかる部位の筋肉から順にトレーニングを行います。鍛えるのが一番辛い部分を最後に持ってきてしまうと、それをこなすエネルギーがもう残っていないため、あまり効果がでなくなってしまうためです。
上半身を鍛える時には大きな筋肉が付いている胸や背中から始め、腕や手は一番最後に鍛えるようにしましょう。
鍛える筋肉を意識、インターバルを短く、3セットを目指す (人は目指して!)
一般的によく「鍛える部位の筋肉を意識しながらトレーニングを行うべき」と言われていますが、たとえばTarzanの記事でも“鍛えている筋肉を意識し続けるのが正解。正しいフォームでも、上の空では効きにくい” と紹介されています。しかも、”筋トレ中に筋肉を手で軽く触れて意識を高めさせる”、狙ったところに力が入った、疲れた、温かくなったといった筋肉の声に素直に耳を傾けること” なんかも効果的ということです。筋肉バカっぽいので、ボクはここまでやりませんが・・・w
それと、他によく言われているのが「鍛えるのに一番良いのは3セット」理論。一説によると、1セットしか行わない場合、30%しか筋肉が使われていないらしく、短いインターバルを挟んで3セット行うことによって、筋肉を限界まで追い込むことができるのだそう。
ここでも、上述した山本義徳氏の理論から言うと「オーバーワーク」にあたるかもしれないので、どこまで追い込むのかは個人の見解次第ですね。ちなみにボクは、基本的に自重トレーニングは4セット、ダンベルワークは2セット、それぞれセットごとに回数を少なくしながら、無理なく負荷を継続的にかけるようにしています
やりすぎ禁物!筋トレ効果の下落、著しい免疫力低下の恐れも
筋トレは時間をかけて長時間こなしても、その効果は限定されてしまいます。運動を開始して75分経過する頃になると、テストステロン (筋力に関係する男性ホルモンの一種) のレベルが低下するとともに、筋肉を分解する悪性ホルモン「コルチゾル」のレベルが高くなり、トレーニング効果が如実に低下していきます。
ですので、効果低減を防ぐため、筋トレを行うのは最大で1時間をメドにすると良いでしょう。それ以上のトレーニングは、自分自身で自分の筋肉を分解するような自殺行為ですから。。!
また、普段行っている運動から大きく離れるような過度なトレーニングは絶対避けること。ケガをしやすくなるばかりでなく、免疫力が大きく低下する恐れがあります。特に有酸素運動の方が影響を受けやすいと言われていますが、とにかく無理は禁物です。(参照:NHK 運動の仕方で免疫力が変化)
筋トレが終わったら「直後にタンパク質を摂取する」がマスト!
筋トレが終わったら、必ずタンパク質を摂取しましょう。タンパク質が筋肉の再生を促すので、筋トレ後にタンパク質の摂取量が少ないと、せっかくの筋トレ効果が現れません。それでは、いつ、何を、どれだけ摂取すればよいのでしょう?
一般的にトレーニング直後、30分以内が「ゴールデンタイム」と言われています。これは成長ホルモンが活発に分泌され、栄養が最も吸収されやすいタイミングで、ここでタンパク質を摂取することにより、効果的な筋肉の修復や再合成が期待できるのです。ですので、トレーニング直後30分以内のタンパク質摂取はマスト。消化&吸収が早い方がベターだということなので、必要と思う方はプロテインの摂取を行ってください。
その他、各食事でバランス良くタンパク質を摂取すべきなのはもちろんのこと、後述する摂取必要量に足りないと思う人は、就寝1~2時間前にタンパク質を摂取するのも効果的です。これは、筋肉の生成に関わる成長ホルモンが眠っている間にも分泌されるからで、十分な睡眠と組み合わせればより高い効果が期待できます。
三大栄養素のひとつであるタンパク質は、肉、魚、卵、大豆製品、乳製品などに多く含まれており、これらからバランス良く必要量を摂取できれば理想です。権威あるアメリカの国際スポーツ栄養学会*の発表や、イギリスのスポーツ栄養学の専門家 David Rogerson**氏の記事によると、トレーニングした場合、1日に摂取すべきタンパク質の量は「体重x1.4g~2.0g」が理想である、という見解を示しています。
体重70kgの人であれば、100~140gが目安ということになりますが、仮に140gを食事から摂取するとなると、ステーキで700g、卵は20個、牛乳で4Lもの量が必要になり、3回の食事だけで摂取するには結構無理があります。仮にできたとしても、余分な脂質+カロリーを摂取することになるので、マッチョを目指す人は必然的にプロテインを摂取する、という流れになってるんですね。
ヨーロッパでは、ジム利用者の半数以上がプロテインを摂取しているという2019年の調査結果があるようですが、ボクは細マッチョ体型&健康をキープするのが目的で筋トレをしていることもあり、いわゆる「プロテイン」は摂取していません。
上述のRogerson氏は同記事の中で “栄養素はプロテインではなく、食事から摂取することをオススメ” されていますし、ボクは今後も極力自然な形で、食事を通じてのタンパク質摂取を継続したいと考えています。
*国際スポーツ栄養学会: The International Society of Sports Nutrition (ISSN)、2003年に米国で設立されたスポーツ栄養(特にサプリメント)に特化した学会
**David Rogerson:イギリスのSheffield Hallam Universityにて、スポーツ栄養学等 (Sports Nutrition and Strength and Conditioning) を主任講師として担当
以上、今回は実際に筋トレを行うにあたっての、事前に知っておきたい筋トレ知識について、ご紹介しました。調べれば調べるほど、人によって異なる見解があったり、まだ科学的に証明できていないことがあったり、新たな発見ばかりでした。結局は、トライ&エラーを積み重ね、自分に合ったトレーニング方法を編み出すのがベストですね。
ウイルスに負けない体づくりシリーズ、次回は筋トレ前後には欠かせない、ストレッチの重要性について、ご紹介します。
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